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仕事の才能

kage

2022/11/20 (Sun)

「どこにお勤めですか?」

これを聞かれた私は心の中でため息をついた。

なぜ、それをこのタイミングで聞くのかという残念な感情である。

私はひげ脱毛に来ていた。

今日で最後だ。

3年通ったのだ。

このサロンのマニュアルでお客様と会話をしてコミュニケーションを取れと言われてるのはわかる。

しかしこの男は32回目の脱毛に来る私に聞いてきた。

22歳ぐらいだろうか。髪型は今流行りのマッシュ。

色白で細身の草食系。

たぶん苗字は斎藤か鈴木だろう。

ありふれた名前だよ、きっと。

お前みたいなのが神宮司アキラとかないからな。

凡人の中の凡人として生まれた斎藤は、過去10数回にわたって質問された「どこにお勤めですか?」を初対面と言う理由でぶつけてきたのだ。

この上なく迷惑でやり取りをしたくない。

適当に答えた後、「今日はお休みですか?」になるだろう。

最大限のひきつった笑顔で、しかたなく私は答えた。

「○○企業に勤めてます」

「今日はお休みですか」

くたばれ!斎藤と心の中で思いながら、顔に出さないように5秒ほど沈黙した後、静かに「はい」と答える。

この会社にはお客様情報なるものはないのか?

いやあるはずだ。

そして会話をした担当者がメモっているはずだ。

そんなもんにも目を通していない斎藤がこいつで、もはや話す気のない私から一盛り上がりしてやろうとしている。

斎藤、お前に仕事の才能はない。

残念だが向いてない。

会社がクソだ、上司がダメとかって言って辞めたらいい。

なぜなら、うんざりしている私とさらに会話を続けようとしているからだ。

ここで出来る奴は黙る。

すぐに察知して、もくもくと施術をして必要以上の会話をやめる。

しかし斎藤、お前はどうだろう。

なぜやめない?

「これからどこかへ行くんですか?」

やめろ斎藤。もうやめるんだ。お前が傷つくだけだし、今後もお前は残念な選択しか出来ないんだ。

広げる気はない。「どこにも行かないです」

少し黙ったのもつかの間、気を取り直してまた来た。

「趣味は何ですか?」

お見合いか?このまま年収は?とか聞いてきたら笑ってやりたいが、お前にそのスキルがないことは序盤でわかっている。

もう終わろう。

私は目をつぶっている。

もちろん答えた。「これといって、何もないです」

ごめん、斎藤。休日になってまで人に気を使って会話したくないのを察してくれ。

しかもありきたりな定型文。

キャバ嬢の「何才ですか?」からの「へー若いっ!」ぐらいの定型文を32回目脱毛ラストのおっさんにするな。

他にもユーチューブ見ますか?やネットフリックスは?とか、まあ誰かの何かに必ずヒットする質問で私を攻略しようとしてきた斎藤の拷問は、終始「なにもしないです」でシャットアウトした。

いや、言うべきだったか?

言わなくてよかったと思う。

仕事は才能だ。

スポーツ選手と変わらない。

最初から打球を飛ばせる奴。

最初から足の速い奴。

判断が完ぺきでナイスランが出来る奴。

それぞれいるのだ。

仕事にも残念ながら、何もない奴が存在する。

もちろん私も凡人だ。天才ではない。

そこに気づけている。

自分は県大会までだなとか、プロは無理だなとか、そんなのと同じように、だいたい努力してこの辺かなって見えている。

でも思うところまで頑張れたら自分を解放しようと思う。

夏の大会を終えて野球を続けないと決めた、あの日のようにだ。

斎藤はどこまで行けるのだろうか?

準備は誰でもできる。

今日のお客様は誰だろう?と1,2分調べればいい。

出来る奴は、言われなくてもやる。

気がつくんだ。

斎藤、お前は1日で覚えてしまう人ではないだろう。

何日もかかる奴だろう。

時に、1日でやってしまう奴を嫉妬してるだろう。

徒競走はなくなったが社会では優劣をガンガンつけられる。

社会での徒競走で最下位を走るお前にだって役に立ってることを忘れるな。

お前が最下位でいてくれるから、びりから2番目の能無しは出来る側で、今日もノンストレスで過ごせるんだ。

時には実家に帰り、彼女に慰めてもらうといい。

世の中には一定数、お前のような奴はいる。

もちろん1日で出来る側にいた私だって、明日からストレスいっぱいで戦うのだ。

どのステージでも変わらない。

知っているから、私はお前を責めないぞ。

最後にありがとう。

家族に提供するネタとして、お前を使わせてもらった。

ああ、もっと才能が欲しい。

気づける才能が欲しい。

部長から見たら、私も気づけない斎藤だろう。

でも何とか成長して、おっ!って思ってもらいたい。

もっと偉くなって、もう少し給料が欲しい。



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