2023
Jun
11
0
空手大会
素直にがんばれって思えた。
何年ぶりだろう。心から他人を応援できたのは・・・。
ポジションの取り合い、出世争いにおいて、「おめでとう」なんて言葉は自分がその人よりも10倍上か10倍有利な立場にでもない限り出ない言葉だ。
自分を1番にしたい。
子供を1番にしたい。
1番になれなければ、おめでとうの裏側に絶対的な悔しさがあるのだ。
口先ではおめでとうだが、心の中では舌打ちをしている。
オーディション番組で、誰かが落ちて自分が受かった女は涙を流して、お別れを悲しむのが胡散臭くて仕方ない。
絶対に悲しんでない。
他人の失敗をしめしめと思っている。
そうやって泥臭い世界でのし上がってきたし負けに負けて悔しがっているのが私だ。
でも今回は素直にがんばれって思えたんだよな・・・
だって試合会場に応援しに来てるし。
みんなが行くからとかではなく、一緒に頑張ってきた仲間の成果を見届けたいのと、次に自分が立つであろうステージを見ておきたい気持ちがあった。
きっと来年の今頃は、空手素人の私も少しは強くなっていて、この初心者大会に出させてもらえると思っている。
7割自分ためにきた。
でも結果としては9割応援した。
大会に出たのは私と同じ白帯の山田さん35歳と青帯の鈴木さん36歳だ。
二人とも1年以上経験があり、今回が初めて出る大会になる。
空手には帯ランクがあって、上から黒、茶、緑、黄色、青、オレンジ、白という順で今回は黄帯以下の大会だ。
空手は年齢であったり体重であったり経験年数などのカテゴリーに分けて大会がある。
バリバリの20代の現役とやりあうことがないのが魅力だ。
年をとっても同じカテゴリーなら自分の力を試して上を目指せるのだ。
今回は黄帯以下で年齢制限はない。
山田さんと鈴木さんの相手は3人いて総当たり戦だ。
3人とも30歳と若い人で強そうだった。
やっぱり若いってだけで強みだと思う。
白帯の山田さんはメンタルが病んだ人だ。
本人には聞いてないが私にはわかる。
空手も私が入る前は、休んだり、来たりして最近、本格的に復帰したことを聞いた。
仕事の都合らしい。
結果として1年やってるのにまだ白帯でいる。
それに体がムキムキで範馬勇次郎みたいな体をしている。
もうそこまでの情報があれば推測は簡単だ。
休んだ理由はメンタル疾患。
メンタル改善のために医者から進められるのが筋トレやマラソンだ。
そして筋トレやマラソンをすると体が楽になる。
人によっては薬がいらなくなる。
もともとまじめな性格だから、筋トレやマラソンを一生懸命やる。
やった結果、精神疾患者は得てしてムキムキであったり、ウルトラマラソンを走れる化け物が多いのだ。
この人は間違いなく精神安定のために、結果としてこの体になったと言える。
ポジティブな人で筋トレ好きで空手に通っていたら、1年でオレンジ帯や青帯には軽くなっている。
会社でも色々あったのだろう。
そんな山田さんが初の大会で唇を紫色にして緊張しているのを見ると、そりゃクズな私でも応援したくなった。
というより一緒に頑張って練習してきた仲間だという感覚があった。
大会に出るからにはきつい稽古になる。
私たちの道場は、大会使用のメニューをみんなでやる。
大会出場者は10セットで私たちは10セットじゃなくて5セットでやめてもいいと言われるが基本は同じだけやる。
私もたまに、きつすぎる時は7セットで休んだりもしたが一緒に頑張った。
結果は圧倒的勝利だった。
鳥肌が立ったし感動もした。
「人生で初勝利しました」
唇の紫はすっかりと治った山田さんは嬉しそうに話していた。
他の人は思うだろう。
それだけの体を持っていて人生の初勝利とは大げさじゃないか。
私にはわかる。
良いことなんてなかったのだ。
生きてても上手くいかず、つらいことばかりだったのだ。
それでも人生をあきらめず、「生きる」と選択した。
目標もない。
ただ生きるために筋トレしてトレーニングしてきた。
もしかしたら空手も医者から勧められたのかもしれない。
うちの師範は世界大会にも出ていて全国大会でも成績を収めている人で、なにげに偉大だ。
月5500円の破格の値段で教えてくれる。
自身の経験をもとに勝たせてくれる。
勝つと言うことは、そりゃしんどいメニューをやる必要がある。
時代に合わせてか怒鳴ることもなく笑顔で苦しいメニューを出す。
限界で倒れそうなメニューをこなした後でも、笑顔でスラムダンク安西先生の穏やかさで、次の鬼メニューを言い渡すサイコパスぶりだ。
おかげで山田さんも鈴木さんも圧倒的に強かった。
二人とも3戦全勝で終えた。
鈴木さんも初試合で表情が硬かったけど試合が始まったら強すぎるぐらい強かった。
もはや初級大会レベルではない。
そんな強さを見せられてなぜか私まで強くなった気になれた。
そして悔しい気持ちもない。
私は空手においては、誰かと比べる感覚がないことを知った。
「強くなりたい」
子供のころからの欲求を叶えたくて始めた空手だからだ。
自分軸で動けてるから仲間はより高みに行ってくれれば、それはそれで喜べる。
本当にやりたいことは何?
人生であと何をやりたい?
俺は強くなりたい。
強盗が来ても、道端で絡まれても、自分と大切な人を守れる強さが欲しい。
強くなって大会に出て、1つでも勝って、高揚感を得たい。
上には上がいて、きっと本気で稽古しても負ける時は負ける。
人生全振りして空手をしても負ける。
ここは才能だから仕方がない。
私は師範のように日本一とかには、きっとなれない。
でも目指すのだ。
でも夢見て一歩一歩進むのだ。
結果として大きな大会とかにも出れるようになれたらいい。
自分の才能の限界までは高めたい。
空手には夢がある。
40代の大会。
50代の大会。
オッサンになっても上を目指して青春が出来るのだ。
やっと他人と比べないものを見つけた。
いや、もしかしたら空手家としての道が人間性を高めてくれているのだろうか・・・
続く。
範馬勇次郎はこちらの人です。
何年ぶりだろう。心から他人を応援できたのは・・・。
ポジションの取り合い、出世争いにおいて、「おめでとう」なんて言葉は自分がその人よりも10倍上か10倍有利な立場にでもない限り出ない言葉だ。
自分を1番にしたい。
子供を1番にしたい。
1番になれなければ、おめでとうの裏側に絶対的な悔しさがあるのだ。
口先ではおめでとうだが、心の中では舌打ちをしている。
オーディション番組で、誰かが落ちて自分が受かった女は涙を流して、お別れを悲しむのが胡散臭くて仕方ない。
絶対に悲しんでない。
他人の失敗をしめしめと思っている。
そうやって泥臭い世界でのし上がってきたし負けに負けて悔しがっているのが私だ。
でも今回は素直にがんばれって思えたんだよな・・・
だって試合会場に応援しに来てるし。
みんなが行くからとかではなく、一緒に頑張ってきた仲間の成果を見届けたいのと、次に自分が立つであろうステージを見ておきたい気持ちがあった。
きっと来年の今頃は、空手素人の私も少しは強くなっていて、この初心者大会に出させてもらえると思っている。
7割自分ためにきた。
でも結果としては9割応援した。
大会に出たのは私と同じ白帯の山田さん35歳と青帯の鈴木さん36歳だ。
二人とも1年以上経験があり、今回が初めて出る大会になる。
空手には帯ランクがあって、上から黒、茶、緑、黄色、青、オレンジ、白という順で今回は黄帯以下の大会だ。
空手は年齢であったり体重であったり経験年数などのカテゴリーに分けて大会がある。
バリバリの20代の現役とやりあうことがないのが魅力だ。
年をとっても同じカテゴリーなら自分の力を試して上を目指せるのだ。
今回は黄帯以下で年齢制限はない。
山田さんと鈴木さんの相手は3人いて総当たり戦だ。
3人とも30歳と若い人で強そうだった。
やっぱり若いってだけで強みだと思う。
白帯の山田さんはメンタルが病んだ人だ。
本人には聞いてないが私にはわかる。
空手も私が入る前は、休んだり、来たりして最近、本格的に復帰したことを聞いた。
仕事の都合らしい。
結果として1年やってるのにまだ白帯でいる。
それに体がムキムキで範馬勇次郎みたいな体をしている。
もうそこまでの情報があれば推測は簡単だ。
休んだ理由はメンタル疾患。
メンタル改善のために医者から進められるのが筋トレやマラソンだ。
そして筋トレやマラソンをすると体が楽になる。
人によっては薬がいらなくなる。
もともとまじめな性格だから、筋トレやマラソンを一生懸命やる。
やった結果、精神疾患者は得てしてムキムキであったり、ウルトラマラソンを走れる化け物が多いのだ。
この人は間違いなく精神安定のために、結果としてこの体になったと言える。
ポジティブな人で筋トレ好きで空手に通っていたら、1年でオレンジ帯や青帯には軽くなっている。
会社でも色々あったのだろう。
そんな山田さんが初の大会で唇を紫色にして緊張しているのを見ると、そりゃクズな私でも応援したくなった。
というより一緒に頑張って練習してきた仲間だという感覚があった。
大会に出るからにはきつい稽古になる。
私たちの道場は、大会使用のメニューをみんなでやる。
大会出場者は10セットで私たちは10セットじゃなくて5セットでやめてもいいと言われるが基本は同じだけやる。
私もたまに、きつすぎる時は7セットで休んだりもしたが一緒に頑張った。
結果は圧倒的勝利だった。
鳥肌が立ったし感動もした。
「人生で初勝利しました」
唇の紫はすっかりと治った山田さんは嬉しそうに話していた。
他の人は思うだろう。
それだけの体を持っていて人生の初勝利とは大げさじゃないか。
私にはわかる。
良いことなんてなかったのだ。
生きてても上手くいかず、つらいことばかりだったのだ。
それでも人生をあきらめず、「生きる」と選択した。
目標もない。
ただ生きるために筋トレしてトレーニングしてきた。
もしかしたら空手も医者から勧められたのかもしれない。
うちの師範は世界大会にも出ていて全国大会でも成績を収めている人で、なにげに偉大だ。
月5500円の破格の値段で教えてくれる。
自身の経験をもとに勝たせてくれる。
勝つと言うことは、そりゃしんどいメニューをやる必要がある。
時代に合わせてか怒鳴ることもなく笑顔で苦しいメニューを出す。
限界で倒れそうなメニューをこなした後でも、笑顔でスラムダンク安西先生の穏やかさで、次の鬼メニューを言い渡すサイコパスぶりだ。
おかげで山田さんも鈴木さんも圧倒的に強かった。
二人とも3戦全勝で終えた。
鈴木さんも初試合で表情が硬かったけど試合が始まったら強すぎるぐらい強かった。
もはや初級大会レベルではない。
そんな強さを見せられてなぜか私まで強くなった気になれた。
そして悔しい気持ちもない。
私は空手においては、誰かと比べる感覚がないことを知った。
「強くなりたい」
子供のころからの欲求を叶えたくて始めた空手だからだ。
自分軸で動けてるから仲間はより高みに行ってくれれば、それはそれで喜べる。
本当にやりたいことは何?
人生であと何をやりたい?
俺は強くなりたい。
強盗が来ても、道端で絡まれても、自分と大切な人を守れる強さが欲しい。
強くなって大会に出て、1つでも勝って、高揚感を得たい。
上には上がいて、きっと本気で稽古しても負ける時は負ける。
人生全振りして空手をしても負ける。
ここは才能だから仕方がない。
私は師範のように日本一とかには、きっとなれない。
でも目指すのだ。
でも夢見て一歩一歩進むのだ。
結果として大きな大会とかにも出れるようになれたらいい。
自分の才能の限界までは高めたい。
空手には夢がある。
40代の大会。
50代の大会。
オッサンになっても上を目指して青春が出来るのだ。
やっと他人と比べないものを見つけた。
いや、もしかしたら空手家としての道が人間性を高めてくれているのだろうか・・・
続く。
範馬勇次郎はこちらの人です。
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